番組構成師 [ izumatsu ] の部屋

♪今日のBGM=Little Feat 『Hotcakes & Outtakes』


2月になってしまった。繁忙期に突入。
この時期から5月末までが、一年で一番忙しい季節だ。

なぜ、この時期が忙しいのか。
それは、民間放送連盟賞という“一大番組コンテスト”の出品規程に
「5月末までにオンエアされた番組」という条項があることと
密接に関係している。

民間放送連盟賞は民放で最も権威があるとされる賞で、賞金はないが名誉はある。
その“名誉”は、獲得した局には制作力があるという証明ともなるので、
不況の昨今、営業面でも活用が期待される。

ということを知ったのは、つい昨年のこと。
それまでは、大いなる(が、業界内に留まる)名誉だと思っていた。

昨年の初夏、某局でディレクターと食事を取ろうとレストランに入った時のこと。
運悪くと言おうか、某局の会長&社長&常務が会食中。
めざとく常務に見つけられたぼくらは、食事の席に呼ばれた。
そして、三首脳から、「何が何でも賞を取れ!」と檄を飛ばされまくった。

その席から離れ、ディレクターとふたり、辟易しながら食事をしていると、
そこへ常務がまたやってきた。
しかし、今度は諭すような、自らに言い聞かせるような口振りで、こう言ったのだ。

--とにかく賞を取ってくれよ。今、営業で売り物がないんだ。

ぼくは尋ねた。

--受賞が営業に役立ちますか?

--そりゃ、立つよ。うちの局には制作力があるという裏付けになるじゃないか。

--はぁ~、なぁるほどぉ。

--視聴率では他局に負けてる。
   しかし、自社制作の番組はきっちりとしたものを作る。
   賞を取れば、その営業トークを裏付けることになるだろ。

なぁるほどぉ。
感心した。そういう見方を、ぼくはしたことがなかった。

営業のお役に立てるなら。
気合いも入ったけど、プレッシャーもちょっと大きくなった。


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しかし、奇妙ではある。

テレビ番組の場合、特にローカル局制作のドキュメンタリーは
どんな全国的な、大きな賞であれ、受賞した番組が
全国ネットでオンエアされることはほとんどない。
これがテレビの賞の最大の弱点だし、
賞の視聴者的な意味をほとんどゼロにしている点だと思う。

映画にしろ、新聞にしろ、小説や戯曲にしろ、絵画や彫刻などにしろ、
受賞してその後が認知される絶好の機会となる。
映画は上映館が増えるだろうし、小説は出版部数が増えるはずだ。
新聞は記事を再度掲載したり、本にまとめて出版されたり。
絵画や彫刻も全国の美術館で展示会が開かれたり。
賞により興味を持った一般の人が目にすることが出来る機会を増やす工夫がなされる。

テレビの番組にはそれがない。
制作者側にいる人間として、残念至極、もったいなくて仕方ない。

いい番組だからこそ、受賞する。しかし、その番組の良さを知る人は、
ぼくら制作側の人間でも、ほんのひとにぎりに限られる。
視聴者で言えば、ひとにぎりとさえ言えないくらいの数でしかない。
それが、現実。

民間放送連盟賞を例にあげれば、一年間で最も優れたドキュメンタリーと評価され、
大賞に選ばれた番組でさえ、ぼくら制作者が目にすることはほとんどないのだ。
以前も日記に書いたが、その番組がダビングされたVHSテープが
民放各局に送られるだけ。
見たい人は勝手にご覧ください、という形。

--これって、視聴者はどこにいるの? 誰に見せるための番組なの?

そう言いたくなる。
審査員に見せるだけの、賞狙いの番組ならば、“5月末までにオンエア”という
規程など設ける必要もない。

しかし・・・・・・、

--いい番組だから、見てよ。

そんな風に、友人知人に紹介することもできないのが哀しい。

--NHKみたいな、ちゃんとしたドキュメンタリー、やれよ。

なんど、そんな言葉を聞いたことやら。

オレら、ちゃんとしとるんでっせ!
ローカル局の現場は、カネはない、スタッフは少ない、情けない環境の中、
キリッと光る、ピリッと小気味いい、ホロッと胸を打つ、
NHKなんぞ足元にも及ばん、かっちりした番組を作っとるんでっせ!

日本の北でも南でも、智恵と力を振り絞り、人の心のひだにもぐりこむような、
重くも興味深い番組を、日々研鑚して作っとるんでっせ!

そう言おうにも、その証拠をテレビ画面上で見せられない。
あぁ、もどかしい。

すぐれた、楽しい、心にしみる番組が、ほとんどの視聴者の目に触れることなく、
毎年毎年、消えていく。

視聴者の心に残るのは、結局『地上の星』なのか。


番組の性質が違うから、普段はなんとも思ってないし、
『地上の星』ばかりが再放送されても、なんちゅうこともないけど、
改めて考えてみると、やっぱ、悔しかぁ~!


番組構成師の部屋

“ネコ助-Aoi’s Room”

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