番組構成師 [ izumatsu ] の部屋


♪今日のBGM=Suzi Quatro 『The Best of Suzi Quatro』

------------------------------------------------

もう先々週(5月20日)のことになるが、
日本民間放送連盟(民放連)の諮問機関「視聴率等のあり方に関する調査研究会」が
報告書をとりまとめた。


昨年秋に発覚した日本テレビのプロデューサーによる視聴率操作事件を受けて、
「視聴率がどうあるべきか」、「視聴率以外の指標がないか」といったことを
12月以来検討を重ねてきた。

その概要が民放連のHPで公開されているが、
(「視聴率等のあり方に関する調査研究会」報告書概要)
その中味のなさ、具体性の欠如に、予想はしていたもののガッカリである。

簡単に言えば、現状を解説し、分かり切ったコメントを付け加えただけ。
例えば、事件の重要性を鑑み、報告書はこう述べている。

--すべての関係者が視聴率調査の信頼性を損なわないよう肝に銘じておく。

肝に銘じる・・・・。
こんな、関係者にモラルの徹底を呼びかけるための「調査研究会」じゃないだろう。

モラルの話は各テレビ局・代理店・スポンサーにまかせればいいことだ。
なのに、有識者が激論を交わし、導かれたのが「関係者は肝に銘じろ」なの?。

肝に銘じる・・・・古色蒼然とした言葉に、ただ唖然呆然。


------------------------------------------------


調査委員会が設けられた大きな目的のひとつに「視聴質」がある。
視聴率にかわる指標としての「視聴質」という概念は昔からある。

以前、日記にも書いた(「2003.10.16の日記」)が、
ぼくがビデオリサーチの新入社員としてキー局の部長クラスから研修を受けた際、
某キー局の部長が「視聴率は量だ、質じゃない!」と吐き捨ててからでさえ
すでに四半世紀たつ。

日テレプロデューサーの事件を受け、
この調査委員会がどのように「視聴質」を具現化するか、
それをぼくは期待していた。淡い期待だが。

--視聴率にかわる指標を短期間で作るのは困難。

ぼくの淡い期待に対する回答がこれである。

そんなことは四半世紀前に某キー局部長の言葉で言い尽くされている。
困難なのは分かり切ったこと。その困難さを分かったうえで、
どうすればいいかを話し合ってきたのではないのか、5ヵ月間も。

「活発な論議が展開された」というが、論議を重ねた上でこの結論?
あぁ、なんたるムダ。
こんな内容を作りあげるために、わざわざ有識者(って一体なんやねん?)に
お集まりいただく必要はない。
現在の、そして今後も視聴を担うであろう高校生や大学生の
柔軟な発想にゆだねた方が、もっと具体性のあるものになっただろう。


有識者からは、こんな意見も出されている。

--視聴率の高い番組制作を追い求めるあまり、
--番組の内容が低俗化する危惧がある。

要は、「低俗な番組を流せば視聴者は飛びつく」ということ。
視聴者は低俗を求めているというのだ。
そのように有識者や番組制作者が思っていること自体、視聴者を愚弄しているし、
“低俗”の定義もなしに、報告書という公的性格を持つ文書に
こうした表現を使うのはいかがかとも思う。

有識者のアタマの中では“視聴者=低俗”という等式ができているのだろう。

テレビ開局以来半世紀以上にわたって“低俗”な番組作りに
きゅうきゅうとしている現場が、有識者の言う“高尚”な番組を作れるか?

大大大疑問である


番組低俗化を憂う有識者は、続けてこう提言した。

--この現状を少しでも改善するために、
--新しい番組評価基準の策定に向けすべての関係者が努力すべきである。

しかし、具体的なモノは何ものも生まれなかった。

話し合うだけなら、誰でもできる。
議論の結果に必ず具体性を帯びさせる、そんな強い姿勢が
この「調査研究会」にはあったのだろうか?
「視聴質」という指標を作ろうという気概があったのだろうか?

そもそも、「質」という感覚を指標とすることが可能なのか?


「できるのぉ?」


この「視聴率等のあり方に関する調査研究会」は、
その成果として3項目の提言を発表している。
が、提言を述べる前に、こう言い訳もしている。

--検討期間の制約のもとで十分な審議ができなかった。

5ヵ月間では短かったらしい。
では、どのくらいの検討期間があれば
「視聴質」に具体性を持たせることができるのか?
5ヵ月でムリなら、5年間検討し続けてもムリだろう。


で、ほとんど意味のない、みっつの提言とは・・・・。

1.「視聴率調査のデジタル化対応の検討」

CS、BSデジタル、地上波デジタルに加え、
今後はパソコンや携帯によるテレビ視聴などが広がることが予想される。
そうした技術の発展に調査側がついていけるのか。その危惧のもと、
「関係者間で、強力な連携の下で課題解決に向けた努力をする」
そう、報告書は提言している。

「努力をしましょう」・・・・あたり前である。
あたり前のことを仰々しく述べねばならない“報告書”のアホらしさ。
気の毒にさえ感じる。


2.「報奨・顕彰制度の充実」

「民間放送番組の質的向上を図ることをねらいに、
放送事業者のみならず、関係者の周知、活用面での支援を得ながら、
『報奨・顕彰制度』を充実させていく」。

だと・・・・?? 意味が分からない。
アメを与えれば、質の高い番組ができるというのか?
有識者各氏およびこの調査研究会に名を連ねる放送事業者
(要するに、テレビ局の偉い人)たちは、現場の思いを知っているのだろうか。

ご褒美なぞ、いらない。
現場は、苦労し、力を込めて作った番組により多くの人が接する機会を
作って欲しいのだ。
ご褒美付きコンテストはもう多数ある。が、視聴者に知られてはいない。
民放連が主催する、民放で最も権威があるとされる連盟賞の大賞受賞作品でさえ、
全国放送されることはない。
視聴者は、その年度で一番優れているとされた番組に接する機会がない。
よって、その存在すら知らないのだ。

いったい、何のための、誰のための“賞”なのか?
賞状やトロフィーを局のロビーや応接室、社長室に飾るため?
視聴者の存在はどこにあるのだろう。

こうした現状から、まず改正すべきではないのか。
足元の整備もせずに、「ご褒美をたくさんあげましょう」ですか?
いりません、そんなもの。

提言が言う『報奨・顕彰制度』を効果のあるものにするためには、
これまでのように業界内に留まる自己満足的な“報奨”ではなく、
業界で“ゴールデン”と呼ぶ時間帯に、全国放送するようなことを
考えて欲しい。

そんな“ご褒美”なら、現場は大歓迎だ。


3.「視聴率調査会社の監査の充実」
事実上、ビデオリサーチ一社独占の視聴率調査。
その監視の目を厳しくしましょうということ。
当然だが、視聴率メーター設置世帯を訪ねるメンテナンス車のあとを
つけるという姑息な手段をとるヤカラはこれからも出てくるだろう。
これは、ビデオリサーチ側というよりもやはり局関係者のモラルの問題だ。


------------------------------------------------


報告書に、こんな一文がある。

--統計上の誤差がある視聴率データについて、
--コンマ何パーセントの違いに一喜一憂するような利用の仕方については、
--これを戒めること。

先日、編集のため、某局に行った。

廊下の壁には視聴率調査の表が張ってあり、
「ゴールデン」、「プライム」、「全日」と、みっつの時間帯別に
数字が大きく記されていた。
3分類の中のひとつの視聴率は、その局と1位の局の視聴率の差はコンマ1。

「惜しくも2位!」

コンマ1、「0,1」の差など、誤差範囲。
別会社が同じ期間に調査をしたら、結果が逆になっている可能性も大だ。
それでも、勝った負けたと騒がねばならない。

この調査委員会がどのように“戒め”ても、コンマ以下の攻防は続くだろう。
そしてそれは「視聴質」が具現化しても、同じに違いない。
「視聴質」を数値化し、それを営業ツールとして使う限りは。

しかし、「これを戒めること」ですか・・・・。
高見からご意見している有識者の姿しか目に浮かばない。
なんのための「調査委員会」だったのやら。



◆PM5:20 ======================================

♪今のBGM=Grand Funk Railroad 『Live』


元「ナターシャセブン」の坂田じゅんじさんが、同居していた女性を
殴って死なせたとして逮捕された。

ショックだ。

ナターシャセブンは、高石ともやさんを中心に結成されたグループで、
学生時代、ぼくは大好きだった。
彼らのアルバム「107ソングブック」は、すべて持っていたし、
コンサートに行ったこともある。
坂田さんの弾くバンジョーは、ステージの花でもあった。

音楽を生活の糧とする彼らにあこがれなどを持つ年代ではもうなかったが、
ぼくは彼らのステージのにこにことした明るさがとても嬉しかった。

そのステージから、木田たかすけさんが交通事故死という形で去り、
坂庭しょうごさんは病気で亡くなった。
そして、城田さん・・・・・。

同居女性を「別れ話を持ちかけられ、かっとして殴る」という、
あまりに現実的な出来事で、ステージを降りる。

ぼくの記憶のステージでは、4人のミュージシャンが演奏を続けているけれど、
それが完全に過去の想い出であることを思い知らされた。


番組構成師の部屋


“ネコ助-Aoi's Room”

スポンサーサイト