番組構成師 [ izumatsu ] の部屋


子供たち、ひとりびとりに言わねばならない。

君はなんであるか知っているか。

君は驚異なのだ。

二人といない存在なのだ。

世界中どこをさがしたって、君にそっくりな子はいない。

過ぎ去った何百万年の昔から、君と同じ子供はいたことがないのだ。

ほら、君のからだを見てごらん。

実に不思議ではないか。

足、腕、器用に動く指、君のからだの動き方!

君はシェイクスピア、ミケランジェロ、ベートーヴェンのような人物になれるのだ。

そうだ、君は奇跡なのだ。

だから大人になったとき、君と同じように奇跡である他人を、傷つけることができるだろうか。

君たちは、たがいに、大切にし合いなさい。



番組作りの準備のために読んでいた本 『 生き残る~沖縄・チビチリガマの戦争 』 で、懐かしい文章にめぐり会った。

チェロの巨匠 パブロ・カザルス の言葉(『 パブロ・カザルス 喜びと悲しみ 』 より)。


ぼくがこの言葉に初めて出会ったのは、確か学生時代の終わり。そのころは、いい言葉だなとは思ったけれど、あたり前のことを言っているとも思った。ぼくはまだ「子ども」だったのだろう。

おとなとなって改めて出会ったこの言葉の印象は、あのころとはまったく違う。人間が、自分自身の可能性を自由に追求できるということ。それがどれだけ素晴らしく、そして得難いことなのか、おぼろげながらも知った今、この言葉の重みが心にしみる。

自分が唯一無二の存在であることを知らねば、他者の価値もわかるまい。自分と他人は違う、それだからこそ意味がある。違う人間だからこそ、分かり合えるまで語り合わねばならない。違う心を持つから思い通りにはならないし、だからこそ尊重しあわなければ生き難い。


子どものころ、驚異だったぼく。シェイクスピアにもミケランジェロにもベートーヴェンにもなれなかったけど、自分自身にはなれたかな。


カザルスはこうも言っている。

何よりも一番に大切にすべき賜物は生命そのものである。仕事は生命への挨拶であるべきだ。

胸に痛い。


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