番組構成師 [ izumatsu ] の部屋


炭坑街の思い出をテキトーに書いていたら、悪友たちから書き込みが。で、さらに思い出したことがあったので、同じテーマでもう一日。


ろくですさんが書き込んだ「拾った石炭で風呂を沸かす」話。我が家もまったく同じだった。

きのうも書いたけど我が家の前にはローカル線の線路があった。ぼくがガキのころはレールが4本、6本も並ぶ複線で、客車以上に石炭列車が走っていた。石炭列車はその名の通り、石炭を満載してる。山盛りに、「これでもかっ」と乗せるだけ石炭を乗せた列車が家の前を通り過ぎると、ぼくと姉はカゴを持って線路へ走る。石炭列車が落としていった石炭を拾うのだ。

レールの間やその脇には大人のこぶし大の石炭がボロボロ落ちている。それを拾ってはカゴに入れる。2、300メートルも歩けば、ぼくらのカゴは一杯に。それで風呂を沸かす一日分の燃料には十二分の量があった。

風呂を沸かすのはぼくの役割。マッチで新聞紙に火をつけて、薪と一緒に風呂の焚き口へ入れる。その火が上に置いた石炭に燃え移ると、“黒いダイヤ”石炭は、独特の匂いを出しながら赤く発光しはじめる。この、石炭が燃える匂いがぼくは大好きだった。どんな匂いと尋ねられても、ちょっと答えがたい。とても豊かで爽やかで、鼻腔を魅了する香りなのだ。

赤く燃えはじめた石炭が白く光り出したら完璧に燃えはじめたあかし。その場を離れてもいいのだけれど、ぼくは石炭の燃える匂いをかぎながら、しばらく焚き口から離れなかった。

我が家は風呂もストーブも石炭が燃料だったので、家の脇にブロックで囲んだ石炭保管場所があった。線路で拾った石炭が余ると、残りはその保管所へ。家の近所には石炭や練炭、豆炭を販売している店があって、冬には袋入りの石炭を買っていたような記憶がある。でも、それ以外の季節は風呂を沸かすだけなので、線路で拾う石炭で十分に用が足りていた気がする。

冬になると石炭ストーブの出番。その威力はバツグンで、置いてある台所ばかりか家全体が暖まった。ま、家全体と言っても、幼い頃は台所以外に6畳と3畳の部屋があるだけだったけど。

石炭ストーブの焚き口のふたをあけると真っ白に燃えさかる石炭が豪快で、これまた見てて飽きない。そこに石炭をくべると、パァッと大きくなる炎に蒸気機関車の運転士になった気持ちが味わえて、これまた嬉しい。

この石炭ストーブがガンガン燃えてる板張りで、男衆は即席賭場を開いていたわけだ。片肌脱いだあんちゃんもいたから、きっとすごくあったかだったんだろう。あんちゃん、博打の流れに熱くなっていたのかもしれないな。


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アロンさんが書いている「だいこんの花」。ぼくらが通ったローカル線の密かなアイドルの呼び名。ぼくらの仲間だけにしか通じないけど。

ぼくが通った高校がある町は他にも県立や私立の高校、短大・大学がある地方の小さな学園都市のような町だった。その町の、ぼくらとは違う高校へ、ぼくらと同じ列車で通う楚々とした女の子がいた。

昔も今も、女子高生というのは賑やかだ。よくもまぁあんなにしゃべることがあるもんだと呆れるばかりによくしゃべるし、その声は大きくて耳やかましい。座席に座っても膝を揃えるどころか立て膝ついて、「見えてもいいパンツ」なぞをはき、スカートの中がのぞいても平気だったりする。これがお年頃になったらおしとやかになるのだから女性は恐ろしい。

とにかく、そんなかしましい女子高生群の中で、ひとり静かにたたずむ女の子。別に仲間はずれになっているわけではなくて、友だちと仲良く話もしている。でも、その話し方も他の女の子たちとは違い、穏やかで静か。その対比が鮮烈だった。

ぼくらはその「鮮烈な静けさ」にひかれ、勝手にローカル線のアイドルに祭りあげた。そして、誰かがつけた呼び名が「だいこんの花」。

ぼくらが中学から高校のころはドラマブームで、『だいこんの花』も人気ドラマのひとつだった。決して美人ではないけれど、けなげに生きる女性(川口晶さんだったと思う。今は何をしてるのかな?)を主人公としたドラマだった。

この「決して美人ではないけれど」というところが重要だった。

ぼくらのアイドル「だいこんの花」も、決して美人ではなかった。少し大柄で髪はショート。どこにもいそうな、フツーの女の子。フツーで、決して美人じゃない。でも、どこか清楚で可憐な乙女。そんな感じに、ぼくらは憧れた。かしましい女の子たちに対しては、アプローチする勇気も、相手にされる器量もこちらにはなかったからかもしれないけれど。

ドラマ『だいこんの花』では、番組の冒頭にこんなナレーションが流れた。

  
  人知れず 忘れられた茎に咲き
  人知れず こぼれ散り
  細かな白い だいこんの花



このイメージが、その子にはぴったりだった。
誰が名づけたのかはわからないけど、出色のネーミングだと今も感心する。


そう言えば、同じ列車で通学する別の女の子にぼくらが「四分弱」と呼んでいた子がいたっけ。ドラマ『サインはV』でジュン・サンダース役をやっていた范文雀(はんぶんじゃく)さんに良く似ているけど、ちょっと違う。だから「四分弱/よんぶんじゃく」。

このネーミングも絶妙かも。


「だいこんの花」も「四分弱」も、どこでなにをしていることやら。「だいこんの花」は、ぼくが学生のとき、すでに結婚しているというウワサを聞いた。お幸せでありますように。


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しかし、こんなひで~あだ名をつけては喜んでいた悪友たちとのつきあいも、もう30年を越す。

「腐れ縁」を通り過ぎ、もう、アキラメの境地。
遺った方が骨を拾ってやるけんね。安心しんしゃい。


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