番組構成師 [ izumatsu ] の部屋

♪今日のBGM=Deep Purple 『Live At California Jam』


しっぽ「おっぽ」



旅先で、思わず知らず大夜更かし。

飲んでホテルに戻ったのは、予想外に早かった。
のそのそしているうちに午前0時。なんとなく小腹がすいたなぁ・・・・。
自宅だとそのまま寝るのだけれど、旅先だとちょろと外出できてしまうから不思議。特に宮崎には、ホテルから歩いて数分のところにおいしい釜揚げうどんの店がある。でも、ここ3年くらい食べてない。これは行かずばなるまい。

お店はちゃんとあったけど、おやじさんが若い人になっていた。息子さんがあとを継いだ。そんな感じ。目当ての釜揚げうどんのおいしさは同じ。
ここで、やめておけばいいのにビールも頼む。
つい旅先の勢いというものだけど、おかげで腹四分くらいだったのが腹十四分くらいに。ホテルに戻っても、苦しくて寝れん。

う~ん、ぐるじぃぃぃと、テレビのリモコンをもて遊んでいると、かわいい女の子が歌を歌っている。BSの映画だった。

9歳の女の子・エイミーは、話せない、聞こえない。人気ロックミュージシャンだった父親が嵐の野外ステージで感電死するその姿を目にした時からそうなった。3年間、エイミーは一言も話さなかった。
ある日、近くにすむ売れないミュージシャンの歌を耳にしてから、エイミーは歌を歌うようになる。自分の心を歌に託すかのように。
しかし、心は開かない。
ふたりで暮らす母親は、我が子を精神科へ連れて行く。医者は、歌にだけ反応するエイミーに歌いかけながら診療する。

♪これは、なんに見えるか~い?♪

♪お馬さんよ、お馬さん~♪

でも、エイミーの心は閉じたまま。
母子の生活を問題視した保育施設に保護されたエイミーは、ひとりで施設を抜け出す。警察、知り合い、近所の悪童にいじわるおばさん、みんなそろってエイミーを探す。

♪エイミー、どこにいるんだ~い? 出ておいで~♪

結局、エイミーは、公園でやっていたライブステージから流れてきた父親の曲を耳にしたことをきっかけに、トラウマから解放される。彼女は、父親が嵐の雨の中、感電死したのは自分のせいだと思い込んでいたのだ。
自分を取り戻したエイミーは、自宅前で迎えてくれるみんなに、初めて語りかける。

--Thanks for looking for me,everyone.みんな、探してくれてありがとう。


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泣けた。そして、考えた。人の心の不可思議。

エイミーは父親の死を目にして心を閉ざし、父親の歌をきっかけに自らに戻った。
でも、映画だからエイミーは自分に戻れたけれど、戻れないままに漂う人の方が実際には多い。
ぼくらは自分は自分だと思っているけれど、そう思えない人も多い。
自分がひとりではなくて、何人もいる人たちもいる。
いったい、どれが“自分”なのか? 何より、“自分”って、なんなのか?

--今の自分は自分じゃない。自分じゃない自分でいるのが自分なの。

そう言う女の子に会ったことがある。はたちの頃、沖縄で。
ぶらぶら旅行していたぼくと、旅先で知り合った23歳のトラック運転手、そして「自分じゃない」と言う16歳の女の子。
3人で、深夜、ユースホステルを抜け出し、浜辺で話した。いや、話したとは言えないかもしれない。女の子の言うことを、ぼくと運転手のあんちゃんはただただ聞いていた。何を話しているのか、わからない。ただ、苦しんでいることだけは、わかる、なぜだか。

--死ぬことはできないの、自分じゃないから。

--・・・・・・自分だったら、できるんか?

あんちゃんが、よろよろと尋ねた。女の子はきっぱりと、

--あたり前よ、自分だもの。だから、自分になりたいんじゃない!


浜辺での衝撃がようやく薄れ出した頃、ぼくの下宿にその女の子から電話がかかってきた。東京にきた。運転手のあんちゃんとぼくに会いたい、そう言う。
あんちゃんは、あの旅のあと、運転手をやめて南米に行った。
あの時、相手をしたのはあんちゃんとふたり。今度は、ぼくだけ。
彼女と話すと、ぼくの“自分”も、自分ではなくなる。そんな恐怖が四方八方から迫ってきた。
なんだかんだと電話口でごまかし、ぼくは女の子と会うのを避けた。
怖かった、ただひたすら。

女の子の言葉は精神が病んでいることからきたのか、それとも自己へと足を踏み入れようとする自分に気づいた時の逡巡だったのか、わからない。でも、「自分じゃない、あたしは自分じゃない」と繰り返された時、そして「あんたは?」と問われた時、ぼくもあんちゃんも何も言えなかった。

自分とはなにか、なんなのか?
もう十分わかってていいはず(とその頃は思っていた)年令になっても、さっぱりなんにもわかっていない。

自分って、なんなんだろう?
空っぽのよろいに精神を封じ込められた『鋼の錬金術師』のアルは、自分というものが本当に存在したのか、今も存在しているのかという答えの出ない苦悩に責めさいなまれている。

体のない、心だけの自分は、実在すると言えるのか?
キリスト教徒たちは、最後の審判でよみがえる魂が行き場を求めてさまよわないように体をそのままに保とうとする。大リーグ最後の四割打者デッド・ウィリアムスの息子は、近い(または遠い)将来、復活させようと父親の体を冷凍保存してきょうだいたちから訴えられた。
自分の入れ物としての体が、それほど大切なんだろうか?
その息子本人は、30代半ばの若さで白血病に倒れた。


自分って、なんだろう、ほんとに。
エイミーはいいな、自分に戻れて。


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そんなことをぐにぐに考えていたら、5時になっていた。

あぁ、眠い。



番組構成師の部屋


“ネコ助-Aoi's Room”

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izumatsu先輩、こんばんは♪
今日は調子戻りました!

「エイミー」、私も観ましたよー。
穴沢さんが選んできたビデオでした。
泣けちゃいましたね。
あんなに小さくても心の中には複雑な想いがいっぱい詰まってて、
そのせいで話せなくなっちゃって。
周りの人の温かさでその枷から解放されたエイミーは幸せだよね。
中にはたぶんそのままの人もいるでしょう。
本当にちょっとのきっかけで人ってどうなるのかわからないものね。
それにしてもエイミー役の女の子、歌、うまいですよねー。(*^_^*)

ところで、宮崎放送のお友だちはIさんという方なのですが。
っていってもわからないよね。
あとで私書箱にメールしまーす。(*^_^*)

2004.03.19 22:23 URL | うるとびーず #79D/WHSg [ 編集 ]

うるとびーずさん、おいでませ。

>izumatsu先輩、こんばんは♪
>今日は調子戻りました!

お~、よかったですねっ!
でも、まだ寒いでしょ? ムリは禁物。

>「エイミー」、私も観ましたよー。
>穴沢さんが選んできたビデオでした。

お~(って、上と同じリアクション)、穴沢さん、センスいいなぁ。
ぼくは全然知らない映画だったけど、出張したおかげで見ることができました。
よかった!

>泣けちゃいましたね。

うん、泣けました。
ホテルのベッドでずびずび泣くおぢさん。
ちと情けないです。

>それにしてもエイミー役の女の子、歌、うまいですよねー。(*^_^*)

うん、うまい。歌のうまい子をさがしたんでしょうか。
何気ない演技もよかったけど、セリフは棒読みでしたね。

>ところで、宮崎放送のお友だちはIさんという方なのですが。
>っていってもわからないよね。

お~、Iさん!
って、わかんないや、やっぱし。

2004.03.19 22:45 URL | izumatsu #79D/WHSg [ 編集 ]

タイトルを読んで「スイミー」と間違えてしまいましたが、
エイミーは、映画館で見ました。
結構泣きました。しくしくと。

人の心って不思議です。一見スポンジのようでいて、実は中心部分に核があってとても固い。。。そんなイメージです。

昨年5歳の従姉妹が亡くなりました。
祖母の入院した大学病院に彼女の母親と何度かお見舞いに行っている最中に・・周りの病人から菌に感染したのです。
菌は成長の早い幼児の心臓に到達し、移植でしか助かる方法がありませんでした。
従姉妹は移植手術に向けて渡米準備をしている最中に亡くなりました。
その後、私の叔母はノイローゼになっています。
旦那のことすら分かりません。

いつか、亡くなった従姉妹の声が叔母に届くことを祈っているのですが。

2004.03.20 05:13 URL | じゃんばらや5933 #79D/WHSg [ 編集 ]

★じゃんばらや5933さん、おいでませ。

>昨年5歳の従姉妹が亡くなりました。
>祖母の入院した大学病院に彼女の母親と何度かお見舞いに行っている最中に・・周りの病人から菌に感染したのです。

あらら・・・かわいそう。
おばあさんも、おばさんも、自分を責めるでしょうね。
まわりの人も、なぜあの子がと考えるでしょう。
そんな時、天に召されたという考え方ができないぼくらは辛いです。

>いつか、亡くなった従姉妹の声が叔母に届くことを祈っているのですが。

そうですね。
ぼくも祈ります。

2004.03.20 10:55 URL | izumatsu #79D/WHSg [ 編集 ]













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