番組構成師 [ izumatsu ] の部屋

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NHK『プロフェッショナル/仕事の流儀』で、イチロー選手の特番を見た。そこで印象的な言葉を聞いた。

「存在意義」。

イチロー選手は「観客たちは自分のプロとしてのパフォーマンスを見に来てくれる。その観客たちが満足するプレーを見せられなかったら、プロとしての『存在意義』がない」的なニュアンスでこの言葉を使っていた。

「存在意義」。

この言葉は、ぼくがテレビやラジオ番組の構成をする仕事を始めた18年前から、ずっと頭にひっかかっている。それは「なぜ、自分はこの仕事をするのか? することが許されているのか?」という思いにも関わってくる。

いつかきちんとしたことを書こうと思っているのだけれど、ローカル局というのは一私企業としてはとても奇妙な存在だ。

今、日本全国にいくつローカル局があるのかはっきり知らないけれど、自社制作番組で黒字になっているのは準キー局と呼ばれる大阪や名古屋の局のいくつかなど、数局しかないだろう。自社の製品で黒字になってない。つまり、儲かっていない。なのに、潰れもせずに、しかも社員は高給をはんでいる。

不思議だ。

ぼくが初めて構成をした番組は旅芸人の女座長を主人公としたドキュメンタリー番組だった。オンエア日が数日過ぎたころ、ギャラが銀行口座に振り込まれた。通帳に黒々と印字されたギャラ。その額面を見ながら、ぼくは奇妙な感覚になっていた。

「この金は、どこから来たのだろう?」

その番組はほとんど(全く、かもしれない)スポンサーがついていず、社員にかかる経費以外の制作費だけでも丸々赤字のはずだった。その赤字の中にはぼくのギャラも当然含まれているわけだ。この局が自社制作番組で企業として利益を上げているのなら、プラスになった部分から分配されているという、普通の企業のあり方で処理もできる。が、自社制作番組という「商品」で「赤字」の会社の、どこからぼくのギャラが絞り出されているのか? 妙だなという思いで頭がフワフワ浮ついて、落ち着かない。

その思いは、18年たった今も同じだ。

ぼくは学校を出てからフリーになるまでのおよそ10年間、会社勤めだった。最初に入った会社では、常々「給料の3倍稼げ」と言われていて、ぼくは営業セクションではなかったけれど、自分がいることで会社に損はさせていないという自負はあった。

それから数回転職を重ね、今に至るのだけど、その間、給料の遅配や停止もたびたびだったし、他社の乗っ取りによる社長ら経営陣はじめ社員が軒並み首を切られる現場にも居合わせたりした。それらの原因は、ごく単純。「利益を上げていない」ということに尽きた。

そんな現場を体験したから、出所不明のギャラ(儲けてないのに…)に奇妙さを感じるのだろう。だからと言って、利益至上主義人間になったワケじゃない。もしそうなっていたら、フリーなんて収入不安定、コストパフォーマンスがいかにも悪い仕事を続けはしない。逆に、金は天下の回りもの的な思いが常に頭の中をフワフワするようになった。なんとか、なるようになるのだ。

ちょっと話がズレてきた。戻そう。

要するに「自社製品で儲けていないローカル局の仕事でなぜギャラがもらえるのか?」という、突き詰めると自分の首を絞めかねない命題がこの仕事を始めてからずっとつきまとっているのだ。

で、その救いをどこに求めているか?
それは、自分の「存在意義」を求めるということだ。

ローカル局というのは、元々経営(利益)を無視して設立された。だからその地域の商圏のパワーに正比例することなく、そのパワー以上の局が林立している。そんな、資本主義社会にあってはならざるものがなぜ存在を許されているのか? それは、地域の情報や、人々のニーズや、地域に生きる人の思いのひだに食い込み、地域の人たちが必要としていることや、必要とはしていないけれど伝えるべきことをあぶり出し、地域の人たちに提供するという役割が担わされているからにすぎない。

その役割を全うする際の一員として、ぼくは番組作りに参画している。それだけがぼくの「存在意義」だし、その「存在意義」を常に考え、それだけに必死にしがみついているからこそ、作れば作るほどに赤字を出すだけの番組に胃袋を痛くしながらも参加できるし、ギャラもどうにか後ろめたく感じることなく手にすることができる。

この番組制作における自分の「存在意義」は何なのか? それを考えること、それを感じることのみがぼくのモチベーションということになる。





昨年、番組作りに関連して「存在意義」という言葉を使う4、5人の人たちと仕事をした。その全員が40代後半から50代だ。これからのローカル局を担うべき30代のディレクターや記者からこの言葉を聞いたことがない。まぁ、彼らの世代にしてみれば「存在意義」という言葉自体が死語なのかもしれないが、34才のイチロー選手が使っていたところをみれば、あながちそうとも言い切れない。

番組作りにおける自分の「存在意義」は何なのか、どこにあるのか? そういう、ある意味「青臭い」ことを熱を込めて語るのが40代後半よりも上の世代で、バリバリ仕事をしているはずの30代の若い衆(ディレクターや記者など制作セクションに限らず、営業も編成も同様)からそうした熱を感じることは、ここ数年、ほとんどない。誰もが一生懸命なのだろうけれど、例えば営業の人間は「だって売れないんだもん」的な言葉を簡単に吐く。

制作も営業も、どのセクションも懸命なのは分かってる。しかし、自社製品で黒字になってないにもかかわらず、月々の給料がきちんきちんと支払われる企業がどこの世界にあるだろう?という疑問・疑念がその胸に湧かないのが不思議で仕方がない。

仕事をする以上、自分を鼓舞するモチベーションがあるはずだ。しかし、必要悪の視聴率もさほど重視されず(ライバル局と比較はするけれど)、自社製品で黒字にすることを思い詰める必要もない(会議では叱責されるだろうけど)とすると、一体どこに仕事へのモチベーションを求めるのだろう?

よりよい私生活? 経済的に豊かな将来?

そうしたことが仕事のモチベーションとなることももちろんあるだろう。だが、地域の人たちに伝えるべきだと信ずることや自分が疑問に思ったり楽しいと思ったりしたことを日々電波に乗せているはずのディレクターや記者たちのモチベーションが「自分自身=ワタクシ」のためだけにあるとしたら、それは見ている方にとって強烈に不幸なことだ。

自らの「存在意義」を常に考えること。それはすなわち、自社製品で黒字になることがないにもかかわらず存在を許されているローカル局の今後のあり方を突き詰めることでもある。常にその思いを抱いていないと、30代の連中は経営を担うようになる20年後に、自らの立ち位置の不安定さにおののくことになるやもしれない。

いやいや、その頃まで「系列」という概念がのこっていることやら…。余計な心配ではあろうけれど。


なんにしろ、今年もひとつひとつの仕事における自分の「存在意義」を思うようにしよう。イチロー選手には遠く及ばなくても、ぼくもひとりの“プロフェッショナル”でいたいから。


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イチロー選手は問題意識が違うんだろうね。しっかりしたルーティーンを持ち、成長のための変化を模索している。『守・破・離』を実践しているんだなあって思った。俺ら凡人は何とか生きている。・・・でも、それもありか?

2008.01.04 19:21 URL | アロン #79D/WHSg [ 編集 ]

仕事における、存在意義なんてことを考えてしまうと、私のようなサラリーマンなんて、にやりと笑って、酒に逃げるしかなくなるのよね、、、、!
ミスチルの歌じゃないけど、世界一おいしい酒は、一生懸命働いたあとの酒!  
なんだか暗くなってきた、、、、

2008.01.04 19:45 URL | アロンの下宿人 #79D/WHSg [ 編集 ]

★アロンさん

>イチロー選手は問題意識が違うんだろうね。しっかりしたルーティーンを持ち、成長のための変化を模索している。『守・破・離』を実践しているんだなあって思った。俺ら凡人は何とか生きている。・・・でも、それもありか?

イチロー選手も彼なりに「何とか生きてる」んだと思いますよぉ。
でも、確かに彼は「成長のための変化を模索」し続けてるんでしょう。
模索し続けたいって思いつつ、気がつくと漫然と日々を送ってますもんね。
アカンですな~。


2008.01.05 21:16 URL | izumatsu #79D/WHSg [ 編集 ]

★アロンの下宿人さん

>仕事における、存在意義なんてことを考えてしまうと、私のようなサラリーマンなんて、にやりと笑って、酒に逃げるしかなくなるのよね、、、、!
>ミスチルの歌じゃないけど、世界一おいしい酒は、一生懸命働いたあとの酒!  
>なんだか暗くなってきた、、、、

一生懸命働いたあとにおいしい酒が飲めるってのは最高じゃないすか。そりゃ、暗くならずに、どんちゃん飲んでエエんだと思います。

働いたあとに酒を飲まなくなって久しいです。
飲まなアカンかしら?



2008.01.05 21:19 URL | izumatsu #79D/WHSg [ 編集 ]













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