番組構成師 [ izumatsu ] の部屋

♪今日のBGM=Linda Ronstadt 『 Simple Dreams 』





夜も1時をまわり、窓の外から聞こえるのは虫の声だけ。

りりりりり・・・・・・りーりーりーりー・・・・・・りりりりり

虫が鳴くのは、秋口からだと思っていたことがあった。
でも、実際は、梅雨のうちからこんなに鳴いている。
秋の虫の音が心にしみるのは、聴く方の心の持ちようによるんだろう。

子供の頃、炭坑街の石炭列車が通る線路の脇に住んでいた。
今ごろの季節、夜になると、虫の鳴く声が聞こえてきた。
子供が起きている時間だから、今日のように深夜ということはない。
きっと、10時かそのくらい。

なんで今ごろ鳴いてるのかなぁ?

そんなことを思いながら、眠りについていた。

あるとき、ぎーぎーぎぃ、という、妙な鳴き声が聞こえた。
線路の脇の土手のあたり。
まだ眠たくなかったぼくは、そろり、家を抜け出し、鳴き声のする方へ。
斜めになった土手に生えている草、その根元あたりで、
ぎーぎーぎぃ、ぼくが近づいてもまだ鳴いている。

と、ふっと鳴きやんだ。

えやっ!

ぼくは、声がしていたあたりの土にがばと両手をふせた。
なにかが手のひらの下で動いている。

やた!

獲物を右手につかんでぼくは、明かりの灯った電信柱の下へ駆けていった。
そして握った手を開くと、そこにはツメをかざした、
小さな、でも奇妙で不気味な姿をした虫がいた。
思わずぼくはそいつを電信柱へ投げつけた。

そいつは、ぽとんと地面に落ちると、しばらく動かなかった。
しばらく動かなかったけど、ぼくが遠目に見ているうちに、
かさかさ、どこかへ去っていった。

今のは、おけらかな?

まだ少しどきどきしながら、ぼくは思った。
おけらが鳴く。そんな話を聞いたことがあったから。

家に戻ったぼくは、寝床で少し後悔していた。
おけららしき虫を放り出したこと。
あれがコオロギやスズムシだったら、そのまま持って帰ってきただろう。

おけらが奇妙な格好だったから、ぼくは放り出したのかな。
せっかく鳴いていたのに。悪いこと、したな。

なかなか寝つけなかった。
窓の外からは、虫の声が聞こえていた。
そこには、もう、ぎーぎーぎぃ、という声はなかったけ。




「虫? うまいよ」





同じようなことを、はたち過ぎてからもやってしまった。

初めて夏の沖縄に行ったとき。
竹富島で、夜、知り合った連中2、3人と散歩をしていた。
外灯はなかったけれど、月明かりで歩く道はほんのり見えた。

その道の脇で、ふーっふーっ、と光るものがいる。

あ、ほたるだ!

ぼくは、そいつをつかまえた。
そいつは、予想していたよりも大きく、ぐにゃり、した。

ん?

目を凝らして、ぼくの手に乗るそいつをみんなして見た。
いもむしみたいに、ねじねじしていた。

わぁ!

ぼくは、そいつを草むらへ投げ捨てた。
わぁ、と言ったのは、連れの連中だったけど。

泊まっていた民宿に帰り、宿のお兄さんにその話をすると、

それは、地ぼたるやな。

地ぼたる? そんなものがいようとは思わなかった。
でも、子供の頃と同じように、後悔した。
あいつがほたるだったら、ぼくはそっと離しただろう、と。



番組構成師の部屋


“ネコ助-Aoi's Room”

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