番組構成師 [ izumatsu ] の部屋


自分だったら葬式にどんな曲を流すかなぁと考えていて、その場にいたことがあまりないのに改めて気づいた。なおニンさんは火葬場に一度行ったことがあるそうだが、ぼくは一度もない。幸か不幸か、葬式にも片手で足りるくらいしか出たことがないのだ。

ぼくは葬式が嫌いである。

ぼくの葬式嫌いは高校時代、中学の同級生が亡くなったときに始まる。

彼は確か腎臓が悪く、わずか16歳にして人生を閉じた。特に親しくはなかったものの、同い年が世を去るというのはかなりなショックで、ぼくは元級友たちと彼の家を訪ねた。

葬儀はもう終わっていて、彼の家には何組かの親戚たちが残っていた。憔悴したお母さん。なにをどう言っていいかわからず、どぎまぎおろおろしてる間に、ぼくらは仏間へ座った。仏壇の前には、ひょうきんに笑う彼の写真が飾られていた。

「これが遺影っていうんか。笑っとるのにな」

親戚の人だろう、ぼくらに焼香をすすめた。仏壇に一番近く座っていたぼくが必然的にトップバッターとなった。困った。

「オレ、一度も葬式に出たことないやん」

葬式どころか、線香に火をつけたこともない。墓参りをしたこともなければ、ぼくの家には仏壇もないのだ。

テレビか映画でロウソクの炎から線香に火をつけている様子を見たことを思い出した。同じようにやってみると、線香に小さな火がともる。

「ほっ、やりゃできるやん」

ところが、ここでまた困る。
確か線香からは奇妙なにおいの煙が出るはず。しかし、ぼくの手にある線香は燃えっぱなし。これではダメなのではなかろうか? 消さねばならぬ。しかし、どうやって?

吹き消してはいけないような気がした。彼の遺影に向かって息を吹きかけることは失礼にあたるような気がしたのだ。ぼくは手にした火のついた線香をソッと振った。消えない。少し力を入れて、もう一度振った。消えない。焦って、ピピッと切れよく振ると、線香が折れて仏壇へ飛んでいった。火がついたまま。

そのとき、ぼくの背中から「ぷっ」と吹き出す声が聞こえた。後ろには彼の親戚たちが座っていた。その中の誰かが、ぼくの失態を見て笑ったのだ。

ぼくはふたつの意味で頭に血がのぼった。ひとつには、自分自身の恥ずかしさに。もうひとつは、厳かであるべき場で笑いをもらす人がいることに。それも悲しみにひたっているはずの親戚の中にそんな不遜な輩がいるとは! 我が子を亡くしたばかりの母がいるのに!


なんて嘘っぱちなんだ! と、まぁ、16歳の小僧は憤ったのだった。



葬式が故人を偲ぶ場ではなく、酒を飲み、うまいモノを食い、もう一歩踏み出せば手を拍って歌い出しかねない宴であることは、社会に出てから親戚の不幸で知ることになる。

一連の儀式を否定するつもりはさらさらない。告別式が旧交を温める場となるのも、そうした機会がなければ会うことのない人々に邂逅のときを提供しているからなのだし。
しかし、ほんとうに悲しんでいる人だけが慰霊に訪れるわけではないことを10代で知ったのはまずかった。トラウマとまではいかないが、葬式をシニカルに見る癖がついてしまったのだ。

20代半ば、親戚の葬儀に列席した。ぼくは“身内”なので参列者をむかえる側に座る。場所は青山葬儀場。参列者が並んだ。その親戚は会社のエライ人だったので、記録に残すために数人のカメラマンが写真を撮っていた。そのうちのひとりがぼくにカメラを向けた。続々続く参列者に対し、ありがたいとは微塵も思っていないのに頭を下げ続ける。その動作にうんざりしていたぼくは、カメラに向かって思い切りアカンベーをした。

その写真をネタに、親戚から、会社の社員から、「常識無し」となじられた。


葬式は嫌いだ。


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こんにちは♪

あの「らしい」ふりをするのがどうも苦手。
嬉しいふり、悲しいフリ。静粛。正座!!

あのお経を聞きながら頭は非常に眠いが、足がどうしてもビリビリひどい状態は、まさに拷問状態。
最近は椅子に腰掛ける様式も増えているようだけれど‥葬式ももっともっと発展して、普通になってほしいものですわ。
何しろ人が亡くなったとたんに、病院に裾の下を渡しているのか、すぐに葬儀屋からジャンジャン電話が入るそうですから‥‥。
檀家も不動産屋さんに化してしまったところも多いようでして‥。

ごめんなさい、興味をそそられ、共感する日記でしたので、ついつい何か書きたくなったのです。
気にしないでね。

2005.03.18 19:15 URL | ゆうぐると #79D/WHSg [ 編集 ]

★ゆうぐるとさん

>こんにちは♪

はい、こんにちはぁ。

>あの「らしい」ふりをするのがどうも苦手。
>嬉しいふり、悲しいフリ。静粛。正座!!

そうそう、そうです。
嬉しくないのにニコニコせざるを得ない結婚式とか、ヤですね~。

>あのお経を聞きながら頭は非常に眠いが、足がどうしてもビリビリひどい状態は、まさに拷問状態。
>最近は椅子に腰掛ける様式も増えているようだけれど‥葬式ももっともっと発展して、普通になってほしいものですわ。

ありがたいのかどうなのかは置いておいて、ほんとにメマイがしましたよ。
最近は背筋を伸ばす訓練もしてませんしね。

>何しろ人が亡くなったとたんに、病院に裾の下を渡しているのか、すぐに葬儀屋からジャンジャン電話が入るそうですから‥‥。
>檀家も不動産屋さんに化してしまったところも多いようでして‥。

渦中にあれば葬儀屋さんの段取りのよさというのはありがたいんだと思いますけど、亡くなって、知らせもしないのに業者さんが来るというのも不思議ですよね。
「松・竹・梅」的なパンフレット持参で。奇妙です~。

>ごめんなさい、興味をそそられ、共感する日記でしたので、ついつい何か書きたくなったのです。
>気にしないでね。

いえいえ、どんどんお書きくださいませ。
嬉しゅうございます。

2005.03.18 21:27 URL | izumatsu #79D/WHSg [ 編集 ]













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