番組構成師 [ izumatsu ] の部屋


朝、NHKニュースをぼんやり眺めていると懐かしいメロディが流れてきた。

♪ それはひみつ、ひみつ、ひみつ、ひみつのアッコちゃん ♪

赤塚不二夫さんの『秘密のアッコちゃん』のテーマソング。東京・青梅駅では、今朝から電車の出発合図の音楽がこのメロディが流れるという。こののんびりした音楽がほにゃらんと流れると緊張感もゆるむ。以前の、急ぐ人をさらにさらに焦らせ、駆け込み乗車を強要させるような発車ベルに比べるとずっといい。

でも、なんでアッコちゃんなの?

青梅駅は「昭和」をテーマに、駅の衣替えをしている最中なのだとか。ホームにあるそば屋さんの看板も右から左へと「やばその出い想」的な表示になっている。屋根はトタン拭き。ホームを移動するための地下通路には、手書きの映画の看板が並んでいる。確かに昔はこんな看板が映画館の入り口に掲げられていた。なかなかの手のかけようだ。

しかし、駅のホームでなぜ「昭和」なの?と思わないでもない。利用客に、ぎすぎすした日常から少しでも離れ、穏やかな気持ちになって欲しいというJR側の配慮なのだろうが、「昭和」はそれほどにのどかな時代だったのかなぁと思い返す。

昭和の時代にも「明治100年」などと言って、明治がはやり、懐かしまれたときがあった。そのころは子どもだったぼくにとっては当然懐かしくもなく、明治の文化に心ひかれた記憶もない。そのころ既に、明治は、あまりに遠くなりにけり、だったのだ。

そろそろ「昭和80年」くらいになるころだろうけど、青梅駅の例のように、振り返られるのはせいぜい昭和30年代くらい。経済発展の途上にあった「古き良き時代」(昭和30年代が「古き良き時代」となると、ぼくはもうジジイであるが)、『プロジェクトX』の人気のように(「プロジェクトX症候群」と呼ぶ人もいるとか)、懸命な努力と額に流れた汗が報われた時代を懐かしむというのは、現在に向き合う辛さから一時的にでも逃避する自慰行為のようなもの。

それはそれで大切だ。昭和30年代生まれのぼくは『秘密のアッコちゃん』はリアルタイムで見ているし、中学・高校・大学時代を過ごした1970年代のメロディを耳にすると、思わず心がうるうるするのは事実だし。

でも、振り返ることは大切だと思うけれど、ときにはもう少し昔にさかのぼることが必要だと思う。昭和30年代を懐かしむなら、あのころの“成長への必死の思い”の原点となった戦争の敗北、そしてその戦いを招いた原因までを見据えなければ本当にただのなぐさみになってしまう。

愛知で開かれている万博では『となりのトトロ』に出てくる「サツキとメイの家」が大人気。予約制でずっと先までいっぱいで、入れない子どもたちは展望台から眺めるだけ。この「眺めるだけ」というのも子どもたちにしてみれば意味の分からない「ひどい仕打ち」に思えるのだが、それよりその人気に驚いた。

トトロはぼくも数回見たし、DVDにダビングして保存している。とても楽しく、そしていろんなことを考えさせてくれる、心に爽やかなトトロの風の吹く、そんな映画だった。それはよくできた作り物としてのファンタジーがぼくに与えてくれたイメージで、言ってみれば虚構の産物。その中に登場する「サツキとメイの家」も虚像、がさつな言葉で言えば作り物だ。

偽物の偽物は本物、ということには決してならない。

その作り物を手で触れられる本物としての「作り物」にしてみせた今回の万博。ぼくも遠い昔、親戚の家で五右衛門風呂に入ったことがある。きっと「サツキとメイの家」に行くと、そこここに懐かしさが転がっているに違いない。ニュースではあまりの懐かしさに涙ぐむ初老の女性もいた。

しかし、ぼくらに懐かしい「昭和」。その作り物を見て回ることが子どもたちにとっていいことなのだろうか? どこにもないものをかいま見せる。パソコンの中のバーチャル空間と、この「サツキとメイの家」は、実は同じものなのじゃないかしら? こちらは触れはするけれど、体験することはやはりできないし。


虚像の虚像に、子どもを連れて殺到するおとなたちの気持ちが、ぼくにはよくわからないのだが・・・・。


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青梅ってレトロな映画の看板があったり
して面白いですね。
あっこちゃんか・・
のどかでいいなぁ

2005.03.31 12:08 URL | ジョンリーフッカー #79D/WHSg [ 編集 ]

昨日伊香保の「竹久夢二」記念館に行って参りました^^
(私は一度行ったことがあるのだけれど 義母がまだ行ったことが無いと言うので)

そこは昭和ではなく大正の世界なんですけれど
妙に懐かしいのは何故だろう
大正時代なんて経験したこと無いのにね

2005.03.31 15:57 URL | michie5683 #79D/WHSg [ 編集 ]

★ジョンリーフッカーさん、おいでませ。

>青梅ってレトロな映画の看板があったり
>して面白いですね。

へぇ、そうなんですか?
青梅って行ったことがありません。青梅マラソンくらいしか知らないかなぁ。

>あっこちゃんか・・
>のどかでいいなぁ

確かにあの主題歌のメロディが流れるとのんびりした感じになりますね。

2005.03.31 20:51 URL | izumatsu #79D/WHSg [ 編集 ]

★michie5683さん、おいでませ

>昨日伊香保の「竹久夢二」記念館に行って参りました^^
>(私は一度行ったことがあるのだけれど 義母がまだ行ったことが無いと言うので)

伊香保って、伊香保温泉の伊香保ですか?
竹久夢二は雑司ヶ谷霊園にお墓がありますね。昔、ぼくは霊園から歩いて10~15分くらいのところに住んでいたので、早朝などに時々行きました。よく、ファンの女性らしき人が夢二の墓に手を合わせていましたよ。

>そこは昭和ではなく大正の世界なんですけれど
>妙に懐かしいのは何故だろう
>大正時代なんて経験したこと無いのにね

人の体温を感じるような感じがしますよね。未来都市を今、歩いても、懐かしい感じはしないような気がします。



2005.03.31 20:57 URL | izumatsu #79D/WHSg [ 編集 ]













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