番組構成師 [ izumatsu ] の部屋

♪今日のBGM = Sea Level 『 Cats On The Coast 』


九州・山口・沖縄のJNN(TBS)系列8局を結ぶブロックネット・ドキュメンタリー番組『MOVE2003』。
その年間最優秀作品を選ぶ審査が、昨日、行われた。

『MOVE2003』は、10年間続いた『電撃黒潮隊』の終了を受け、昨年の秋、新たに始まった。

スポンサーがついていた『電撃黒潮隊』とは違い、制作費は各局持ち出し。
どうなるかわからない、とにかく1年間はがんばろうという、先の見えない船出だった。

それだけに、1年間を乗り切ることができたこと、そして、番組コンテストを開催することができたことは、制作現場を率いる人たちにとって自信になったに違いない。

しかし、スポンサーがつく気配は、やはりない。
唯一、『電撃黒潮隊』時の放送時間を引き継いでいたリーダー局も、深夜の時間帯に移行することが決まったという。

--いずれは『電撃黒潮隊』の放送時間に戻りたい。

そう願っていた制作者たちにとって、リーダー局の深夜への放送時間移動はショックだったようだ。


今、どの局も財政事情は厳しい。

--収入の見込みがゼロの番組に制作費をつぎ込むメリットはどこにある?

営業や編成などのセクションからそうした疑問の声があがるのも当然だ。

その疑問に答えつつ、新たな1年間へ向けて足を踏み出さねばならない。

これはかなり大変だ。

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視聴率のとれない、スポンサーがつかない。
そんな番組が、なぜ、必要か?

それは、制作現場の制作力をあげるために他ならない。

テレビ番組を制作し、視聴者に提供する。それがテレビ局。
番組を作らないテレビ局は、テレビ局に非ず。
だから、番組制作に力を入れるのは当然だ。

新卒採用で即制作部へ配属されたにしろ、他の部署を経由してきたにしろ、誰もが最初は番組制作のシロウト。
そのシロウトがクロウトになるための“場”が、テレビ局には必要だ。

8局がスクラムを組み、互いに刺激し合い、競い合う『MOVE2003』。
それは、シロウトはクロウトになるための、そして、秀でた制作者へと熟練していくための、格好の“場”なのだ。

--この“場”は、一度失われると、二度と再び戻っては来ない。

その危機感に似た思いが、制作現場、特に“場”の力を実際に体験してきた制作者たちの間にはある。
場を失うことは、制作力を磨く機会を失うことなのだ。

もちろん、情報番組でも、ニュースでも、制作力は高まる。
しかし、ひとつのテーマを追い、リサーチし、取材し、30分なりの番組に構築する力は、情報番組などで培う制作力とはまた違ったもの。
その力は、時間をかけないと育って行かないものでもある。

そうした制作力は、多様化するであろうこれからのテレビの世界には、絶対に欠くことはできないものなのだ。

しかし、今、テレビ業界は、制作力をじっくり培養するような状況にない。
その事実がいずれ自らの商品である番組の品質を落とすことになるのではないか。

“場”の喪失には、その危惧がつきまとう。

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「ぼくが制作にいる間は、『MOVE』をやり続けますよ、絶対に」

某局の制作部長は、言葉に力を込める。
“場”の力を体験してきた、『電撃黒潮隊』世代のひとりだ。

--やる、オレは絶対にやる。

何よりも必要なのは、まずやる気と情熱。
しかし、番組作りに情熱があるのはテレビマンとしては当然で、「一生懸命やります」とスポンサーに言ったとしても、あたり前だろ、で終わりだろう。

情熱とやる気にプラスした、何かが必要だろう。
社内の、営業や編成なども含めたコンセンサスが得られるような施策が。

例えば、

*『MOVE応援団』結成。

『電撃黒潮隊』では、1年間に制作された番組から秀でた作品を選ぶコンクールを開き、その審査員として、筑紫哲也氏や立松和平氏、村田喜代子氏などの著名人を招いていた。
また、レポーターとして常田富士男氏も登場した。
さらに、プロデューサーK氏つながりでは、三國連太郎氏や夏八木勲氏などの顔ぶれも揃う。

そうした人たちに、ブロックネット・ドキュメンタリー番組『MOVE』のサポートをしてもらうのだ。

現場のやる気だけでは、社内の共感を得ることも難しい。

営業は、番組を売るのが仕事。しかし、『MOVE』を売ろうにも、アピールするものがない。視聴率は低すぎて、スポンサーを説得する材料にはならない。

だとすれば、番組が少しでも売りやすくなるための“宣材”を営業に提供することを制作現場が考えなければならないだろう。

その“宣材”としての『MOVE応援団』だ。
ヒトのフンドシで相撲をとる的な、嫌らしげな手法ではある。
だが、“場”を確保するために、なりふり構っては居られないはず。

ぼくは、これでスポンサーがつくと考えているわけではない。
ただ、営業や編成のことも配慮してますよ、という姿勢を見せることは、とても大切なことだと思うのだ。

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『MOVE2003』、今年の最優秀作品は、長崎放送報道部のI記者がディレクターを担当した番組に決まった。

I記者は、元カメラマン。
ぼくも一緒に仕事をしたことがある(11月6日の日記参照)。
ラグビーをやっていた偉丈夫で、これぞカメラマン、という男だった。

その彼が、カメラマンから営業マンへ配置換えになった時は驚いた。
営業にいた期間はわずかなもの。スッと報道へ異動した時はもっと驚いた。

報道記者としてどこまでやれるのか。
カメラマンとして経験を積んだ彼が、新人同様、サツ廻りからやっていけるのか。
正直言って疑問だった。

しかし、それは杞憂だった。失礼ながら、嬉しい誤算、だ。

彼の制作し、最優秀作品に選ばれた番組は、核兵器廃絶を求める署名を集め国連に送ろうという「高校生1万人署名」を行う高校生を扱ったもの。
この番組も、『MOVE2003』という“場”がなければ、作られることはなかったかもしれない。


新たな才能が花開くためにも、制作の“場”は、やはり必要だ。


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“ネコ助-Aoi’s Room”

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