番組構成師 [ izumatsu ] の部屋

♪本日のBGM = Oysterhead 『 The Grand Pecking Order 』

いやいや、日記、さぼったさぼった。丸々10日間。

他県での編集。東京で泊りがけの資料探し。
東京から戻る途中に、ナレーション収録で立ち寄り。
夜中に帰って翌日は、頭のイタイ打ち合わせ・・・。
などと続いて落ち着いたのが日曜日。
んで、月曜日はまた打ち合わせ・・・。あぁ、体と脳みそがだるい。

資料収集はまだいいのだが(でも、お役人的な対応の遅さにストレスはたまるけど)、
相手があり、時間に追われる編集&打ち合わせは精神的にしんどい。
打ち合わせ、会議と名の付くものは、長引けば長引くほど、収集もつかず、まとまった結論も出ない。

--とっとと進めて、さっさと終わろうよぉ。

そう思っているぼくは、打ち合わせではしゃべる方に回ってしまう。
えらい方は「う~ん・・」と考え込み、そのまま。
どうかすると他の話題に流れてしまう。これまたストレスがたまる。

そんなこんなで昨日は一日、コタツでごろごろ。
朝から寝るまでテレビ三昧。おかげでいろんな番組を見ることができた。


ここ10日でがっかりしたこと。
それは映像関係へのお偉いさんの介入。

ある番組には、子どもたちに命の尊さを教えるシーンがある。
人間は、植物にしろ動物にしろ、他の生き物から命を受け取らなければ生きてはいけない存在であること。
だから、食事をとる場合には、自らの命を支えるために消えていった命に感謝の気持ちを思い出して欲しい。
そんな意味を込めて、子どもたちが育ててきたニワトリを解体するシーンが番組に入れられた。
(そのニワトリは当初から解体するために育てていたもので、子どもたちがペットとしてかわいがっていたものではない)。

いざ、ニワトリを絞めるシーン。ニワトリの頚動脈を切り、絶命させる。
その映像に続いて、見つめる子どもたちの表情が続く。
初めて見るニワトリの最後。
自分たちが日々食べているニワトリもこんな風に誰かの手で絞められ、さばかれている。
そのことを子どもたちはこの日、初めて知る。

命の重さ。
自分たちの命は、他の命によって支えられている。
その事実を子どもたちが知るという大切なパート。

この流れの中で、冒頭の、ニワトリの頚動脈を切り、絶命させるシーン。
そのシーンをカットしろ、というお話なのだ。

頚動脈を切り、絶命させる・・・文字で書くと悲惨な映像に聞こえるが、
実際はカメラも気を遣っていたのだろう、遠めに撮影されている。
ナレーションで「今から、ニワトリの命を断ちます」といった説明をしないと、
何をやっているか、よくわからない程度の映像だ。

それでも、お偉い方々は、丸々カットしろとおっしゃって引かない。

スポンサーの試写は終わっていた。その席ではなんの異論も出なかったという。
逆に「きちんと見せてもらってよかった」というのがスポンサーの意見だった。
だから、“悲惨な”映像をカットしろという命令は、スポンサーを意識してのことではない。
となると、考えられるのは、視聴者からの“お叱り”だ。

--あんな映像を放送するとはけしからん!

そんな“お叱り”が、お偉い方々はコワイのだ。
それを聞いて、つくづく情けなくなった。
確かに視聴者からのクレームは気にかかる。
しかし、クレームが予想されようとも、入れなければならない映像はあるのだ。

上記の番組の中で、首を切られる時の映像を入れると入れないとでは、
子どもたちのリアクションの説得力が大きく違う。
戸惑い、恐れ、遠巻きにして顔をしかめる子どもたちの様子が、
ぜんぜ活きてこないのだ。

子どもたちは当初、遠巻きに見ていたものの、
慣れてくると解体中のニワトリの肉をつつきながら、

--これが食道。ぷにぷにしとう。
--スーパーに並ぶまでに誰かがこんなこと、しとるんよ。

などと話し出す。
その子どもの興味の表れ方も、その導入となるカットがないと、軽くなってしまう。

何を考えているのやら・・・。困ったもんだ、お偉い方は。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


こんな思いをすることは、残念ながら結構、多い。

以前、麻薬に染まった女性を追った番組を手がけた。
若い頃からマリファナや覚せい剤などを使用していた女性。
その女性は、薬漬けの生活から抜け出そうと一念発起。
その過程で男性と知り合い、妊娠する。

出産予定日が近づくにつれ、女性の不安は高まる。

--クスリをやっていたことが、子どもに悪い影響を与えないだろうか・・・。

そんな思い、後悔の念にとらわれる。
その思いの中で、女性はこんな意味のことを口にする。

--五体満足だったら、それだけでいい。指がちゃんと5本あれば、もうそれだけで・・・。

ここにお偉いさんのチェックが入った。
指が5本ない人に対して、差別にあたる恐れがあるというのだ。

ディレクターから理由を聞いたとき、唖然とした。
アホじゃないかと思った。

この女性の言葉を聞いて、「自分に対する差別だ、侮蔑だ」と考える、指が5本ない人がいるだろうか?
仮にいたとして、女性のこの言葉に対し、差別だとする人のクレームは正当なものだと言えるだろうか?

ディレクターは子どもを持つ女性で、自分の妊娠中の経験からも「五体満足」という女性の言葉は本当によく分かるという。
だからこそ、この言葉を入れた。

覚せい剤などのクスリに頼っていた、弱い頃の自分。
その自分が身ごもり、今、親になろうとしている。
その時に襲い来る、これまでの生活への悔悟と出産への不安。

--五体満足だったら、それだけでいい。指がちゃんと5本あれば、もうそれだけで・・・。

そんな女性が発したこの言葉には、心の底からの思いが表れている。
だからこそ、人の心をうつ。

それを「カットしろ」と言った、お偉い男ども。
クレームを、何か言われることだけを遠ざけようとする、肝の据わらない男ども。

同性として、ほんっとにガックリした。
事なかれ主義で仕事ができる。いい立場である。

女性ディレクターも、ぼくも抵抗したけど、ダメ。
「カットしろ」の一点ばり。
結局、オンエア直前にその部分をカット。
編集しなおす時間はないので、番組の流れがその部分で奇妙に飛ぶ。
深みが消える。

情けなくてしょうがない。


そんな“自己規制”の多いこと。
犯罪者、犯罪被害者への人権侵害には信じられないくらい鈍感なのに、
クレームを受けることには過剰に敏感。


自らの保身だけが、判断の基準となってしまっているのだろうか。



番組構成師の部屋

“ネコ助-Aoi’s Room”


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おひさです。
大消耗御苦労様です。
こういう時こそリフレッシュしないといかんね。
とりあえず本日のBGM追記しなはれ。

2004.01.28 09:33 URL | 幻泉館 主人 #79D/WHSg [ 編集 ]

★幻泉館 主人さん、おいでませ。

>おひさです。

そうですね~。10日、こないとプチ浦島太郎みたい。

>大消耗御苦労様です。
>こういう時こそリフレッシュしないといかんね。

んですねぇ。しかし、寒いので外でリフレッシュはしとうないし。
コタツでゴロゴロじゃ、ダメ?

>とりあえず本日のBGM追記しなはれ。

はいはい、しましたっす。
今日は日記のBGMではなく、この返信を書いている時の
BGMでございます。

-----

2004.01.28 09:47 URL | izumatsu #79D/WHSg [ 編集 ]

おはようございます♪

 番組作りの裏側ってホント厳しいものがあるんですね。伝えたいものが別の意図で操作されるなんて、読んでて私も悔しくなりました。

 余談ですが、さっき番組ガイドを見てたら土曜日にはwowwowでマイケル・ムーア特集があるのを見つけました。興味津々。
 あんな人が日本にいたら・・・なんていろんな意味で思ってしまいました。

2004.01.28 10:18 URL | やまじゆみこ #79D/WHSg [ 編集 ]

おひさです。

私も2週間くらい(以上)いろいろあってさぼっていたのですが、IZUMATSUさんが見あたらないな、って思っていました。

それにしても
「五体満足だったら、それだけでいい。指がちゃんと5本あれば、もうそれだけで・・・」
私の母親もそうでしたが出産時の母親の気持ちってただそれ一心なのかもしれません。カットになるのか~!と驚きです。まあ確かにそう生まれてこなかった方を思うとクレーム対象になるのかもしれませんが、それを言い出したらきりが無いですね。せかっくドキュメンタリーなのに。。。

番組を作っていくというお仕事は本当に難しいですね。

2004.01.28 14:26 URL | じゃんばらや5933 #79D/WHSg [ 編集 ]

お久しぶりです。

そういえば音楽の世界でも、トッド・ラングレン
とかポーグスのアルバム・ジャケットが日本のみ
で差し替え(両者共に指が1本多かった)になったし
アリス・イン・チェインズなんかはジャケット
が問題になって1年くらい日本で未発売だったとか
(バンド側が差し替えに応じなかった。足が一本ない
犬の写真)結構あったなあと思い出しました。それでは。

2004.01.29 00:09 URL | コブラクロー #79D/WHSg [ 編集 ]

★やまじゆみこさん、おいでませ。

>番組作りの裏側ってホント厳しいものがあるんですね。

そうですね。厳しいと言うか、相手にするのもアホらしと言うか。
日記に書いた事例では、いかに自ら及び会社に火の粉が降りかからないようにするか、
という点が最大の判断基準ですから。

>伝えたいものが別の意図で操作されるなんて、読んでて私も悔しくなりました。

ほんと、悔しいやら、情けないやら、アホらしいやら。
で、「突っ込みが甘い」と言われる・・・。
視聴者に指摘されると「なるほどね」と納得できるのですが、
業界の人間に言われてもなんとも感じないようになってしまいました。
これも哀しいことでございます。


2004.01.29 08:00 URL | izumatsu #79D/WHSg [ 編集 ]

★じゃんばらや5933さん、おいでませ。

>おひさです。

はぁい、ごぶさたです。

>「五体満足だったら、それだけでいい。指がちゃんと5本あれば、もうそれだけで・・・」
私の母親もそうでしたが出産時の母親の気持ちってただそれ一心なのかもしれません。カットになるのか~!と驚きです。

驚きっすよ、ほんと。
「指が5本あれば・・」という言葉にその女性の過去と
現在が凝縮されているんですけどね。
ぼくの知人には指が3本の人がいます。その人は、指ではなく、
手先がみっつに分かれている形なのですが、その人にこの女性の
言葉を聞いてもらったとしたら、「うん、そうだ」と
言ってくれると確信します。
それは自ら辛さを体験しているからなのです。
言葉のカットを命じたお偉いサンは、逆境に耐える人の心情を知らないし、
カットすること自体がそういう人たちを差別してることにも気づかない。
想像力のなんたる欠如。
そういう人物が、クリエイティブであるはずのテレビ局の上層部には多いです。

クレームが恐いのですが、クレームに答えるのがお前らの仕事だろ!と言いたくなりますね。

2004.01.29 08:14 URL | izumatsu #79D/WHSg [ 編集 ]

裏事情大変なのですね。目をそむけたいものでもドキュメントなら必要な映像でしょう。それを見せなければ残酷なことがリアルに感じられなくなるのでは?
一方でフィクションでは残虐なことが当たり前のように映し出される。 

2004.01.29 08:19 URL | 夜間飛行 #79D/WHSg [ 編集 ]

★コブラクローさん、おいでませ。

>お久しぶりです。

はい、留守にしておりました。お久でございます。

>そういえば音楽の世界でも、トッド・ラングレン
とかポーグスのアルバム・ジャケットが日本のみ
で差し替え(両者共に指が1本多かった)になったし
アリス・イン・チェインズなんかはジャケット
が問題になって1年くらい日本で未発売だったとか
(バンド側が差し替えに応じなかった。足が一本ない
犬の写真)結構あったなあと思い出しました。

とにかく日本は自己規制が多いですよね。
その写真等を見てどう感じるか。それは受ける側の問題なのですが。
クレームという行動に出るのも、受ける側の意思ですし。

それだけぼくら消費者は見る目、許容範囲が狭く、読み取る力が弱い。
そう言えるのかもしれませんね。

ハウンド・ドッグ・テイラーさんは指が6本ありましたが、
裏ジャケなどにちゃんと写ってます。
多い分にはいいんでしょうかね?

2004.01.29 08:21 URL | izumatsu #79D/WHSg [ 編集 ]

★夜間飛行さん、おいでませ。

>目をそむけたいものでもドキュメントなら必要な映像でしょう。それを見せなければ残酷なことがリアルに感じられなくなるのでは?

んです。なにも銃殺され、絶命する様子をリアルに、アップで
見せているんじゃないんですから。
せっかくの内容なのに、リアル感がまるで薄れてしまいます。

>一方でフィクションでは残虐なことが当たり前のように映し出される。 

残酷だったり、人をおとしめるシーンが多用されたり、
どうなっちょるんじゃ?と感じること、多々あります。
あまりにあまりじゃないか、と思える内容の番組。
でも、それが続くということは、見て喜んでいる人がいるからに
他ならないのです。

結局、ぼくらが見たがっているという事実をフィクションの
世界は語っているわけですね。ちょっとコワイです。

2004.01.29 08:27 URL | izumatsu #79D/WHSg [ 編集 ]













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